TOPIC / 特有財産
親に出してもらった頭金は、分与の対象になるのか
独身時代の貯蓄で頭金を入れた。親に500万円出してもらった。そうした事情がある家を、単純に半分に分けてよいのか──。特有財産の切り分けは、財産分与で最も感情がぶつかりやすい論点のひとつです。

このページの結論
- 婚姻前の貯蓄や親からの贈与など、夫婦の協力と無関係な財産は「特有財産」として財産分与の対象外とされるのが原則的な考え方です。
- 特有財産を頭金に充てた家は、その寄与分を控除・按分して計算する扱いが実務上よく用いられます。
- 按分計算には購入時の価格と現在の時価が必要で、価格が動いていると評価が結論を大きく左右します。
- 主張には資金の流れの立証(弁護士の領域)と、各時点の価格の立証(鑑定士の領域)の両方が必要です。
特有財産とは何か
財産分与の対象になるのは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産(共有財産)です。これに対して、婚姻前から持っていた財産や、婚姻中でも相続・贈与など夫婦の協力と無関係に取得した財産は「特有財産」と呼ばれ、原則として分与の対象になりません。
問題は、特有財産が家の購入資金に混ざっているケースです。独身時代の貯金300万円と親からの援助500万円を頭金にし、残りを婚姻後の共同のローン返済で賄った──こうした家は、特有財産の部分と共有財産の部分が一つの不動産の中に溶け合っています。
これをどう切り分けるかについて、実務では購入時の価格に対する特有財産の割合を、現在の時価に投影する按分計算がよく用いられます。
按分計算の例
購入価格4,000万円の家に、妻の親から800万円の援助(妻の特有財産)があったケースで考えます。購入時の特有財産の割合は800万円÷4,000万円=20%です。
| 項目 | 金額・割合 |
|---|---|
| 購入価格 | 4,000万円 |
| うち妻の特有財産(親からの援助) | 800万円(20%) |
| 現在の時価(鑑定評価額) | 3,500万円 |
| 妻の特有財産部分(3,500万円×20%) | 700万円 |
| 分与対象となる共有部分 | 2,800万円 |
| 夫の取り分(共有部分の2分の1) | 1,400万円 |
| 妻の取り分(特有部分+共有部分の2分の1) | 2,100万円 |
※ 説明のための仮の数値・簡略化した計算です。ローン残債がある場合や計算方法に争いがある場合は、これと異なる結論になり得ます。
- 購入価格4,000万円のうち、妻の親からの援助800万円=20%を特有財産として現在の時価に投影
※ 簡略化した計算例です。計算方法自体に争いがあるケースもあります。
この計算で動かせない前提が2つあります。購入時の価格(売買契約書で確定)と、現在の時価です。時価が3,500万円か3,000万円かで、双方の取り分は数百万円単位で変わります。

購入時の売買契約書と現在の物件資料があれば、按分計算の前提となる評価の設計をご提案できます。婚姻時点など複数時点の評価が必要なケースにも対応します。
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評価が複数時点にわたることもある
特有財産が絡むケースでは、必要な価格が1時点で済まないことがあります。たとえば、婚姻前に一方が購入した家に婚姻後ふたりでローンを返した場合、婚姻時点の価値と現在の価値の両方が計算に登場することがあります。
過去時点の価格は、仲介会社の査定では出せません。不動産鑑定評価では価格時点を過去に設定できるため、こうした複数時点の評価にも対応できます。どの時点の評価が必要になるかは主張の構成によって変わるため、弁護士の先生と連携しながら設計するのが確実です。
よくあるご質問
親からの援助は、証拠がなくても主張できますか。
主張の可否や立証の方法は法律上の問題なので弁護士にご相談ください。一般には、振込記録、贈与契約書、住宅取得資金贈与の申告書類などが資料になるとされています。当時の資金の流れがわかる書類を探しておくことをおすすめします。
婚姻前に自分が買った家に、結婚後ふたりでローンを返しました。
婚姻前取得の不動産でも、婚姻後にローンを共同で返済した部分については夫婦の協力による部分として扱われることがあります。切り分けの計算には、購入時の価格・婚姻時点の残債・現在の時価といった数字が必要になり、評価が複数時点にわたることもあります。
特有財産の主張は誰にすればよいのですか。
相手方との協議、または調停・訴訟の場で主張することになります。主張の組み立ては弁護士の職務範囲です。当方は、主張の裏付けとなる各時点の不動産の価値を評価します。
住宅取得資金の贈与税の特例を使いました。関係ありますか。
贈与税の特例を使った記録は、親からの資金援助の存在と金額を示す資料になり得ます。税務上の扱いについては税理士にご確認ください。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません
物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。