TOPIC / 査定と鑑定の違い

仲介査定と不動産鑑定は、どう違うのか

「不動産会社に査定してもらったから、それでいいのでは」。財産分与のご相談で最も多い誤解です。査定書と鑑定評価書は、作る人も、作る目的も、責任の重さも違います。

机の上の査定書類

このページの結論

  • 査定書は仲介会社が「いくらで売れそうか」を示す営業資料で、法律に基づく資格や責任を伴いません。
  • 鑑定評価書は不動産鑑定士だけが作成でき、不動産鑑定評価基準に従って手順を踏み、作成者が内容に責任を負います。
  • 話し合いで双方が納得しているなら査定書でも足ります。金額に争いがあるとき、調停・訴訟に出すときは鑑定評価書が適しています。
  • 査定書は現在時点の価格しか出せませんが、鑑定評価では別居時など過去の時点に遡った評価ができます。

そもそも作っている人が違う

不動産会社が出す査定書は、その会社が「自社で売り出すとしたらいくらの値段をつけるか」を示したものです。作成に資格は要りません。無料であることがほとんどなのは、媒介契約(売却の依頼)を取るための営業活動の一環だからです。

一方、鑑定評価書は不動産の鑑定評価に関する法律に基づき、不動産鑑定士だけが作成できる書面です。国土交通省が定める不動産鑑定評価基準に従って手順を踏み、作成した鑑定士の氏名と登録番号が記載されます。内容に誤りがあれば、鑑定士は業務上の責任を問われます。

この違いは、書面の見た目以上に大きな差になります。査定書には「なぜその金額なのか」を第三者が検証できる形で書く義務がありませんが、鑑定評価書には、どの取引事例を採用し、どう補正し、どの手法で何円と算出したかを記載する必要があります。

ひと目でわかる、査定書と鑑定評価書の性格の違い

仲介会社の査定書

売却の依頼を受けるための営業資料

  • 無料・数日で入手できる
  • 作成に資格は不要
  • 根拠の記載義務なし
  • 現在時点の価格のみ

鑑定評価書

不動産鑑定士が責任を負う正式書面

  • 不動産鑑定評価基準に準拠
  • 採用事例と補正過程を明記
  • 過去時点の評価も可能
  • 調停・訴訟の証拠資料として機能

8つの項目で比べる

仲介会社の査定書不動産鑑定士の鑑定評価書
作成できる人資格不要(誰でも作成可)不動産鑑定士のみ
根拠となる法令なし不動産の鑑定評価に関する法律/不動産鑑定評価基準
目的売却の依頼を受けるための提案対象不動産の適正な価格の判定
費用多くは無料20万円〜(物件類型による)
価格の性質売り出しの参考価格・成約見込み価格正常価格などの鑑定評価額
価格時点原則として現在過去の時点に遡ることも可能
作成者の責任契約上の責任にとどまる不動産鑑定士としての業務上の責任
調停・訴訟での扱われ方参考資料の一つ価格の根拠を示す証拠資料

※ 訴訟における証拠の評価は裁判所の判断によります。鑑定評価書が常に採用されるとは限りません。

なぜ査定額は会社によって違うのか

同じ物件でも、仲介会社によって査定額が数百万円違うことは珍しくありません。これは、どの会社かが間違っているというより、査定という行為の性質によるものです。

第一に、査定額には「この金額なら預かれる」という営業判断が入ります。媒介契約を取りたい会社は高めの金額を示す傾向があり、早く売り切りたい局面では低めに出ることもあります。第二に、採用する成約事例の選び方に決まりがありません。同じマンションでも、参照する住戸が違えば結論は変わります。

財産分与の場面では、この幅がそのまま当事者の対立になります。高い金額を主張したい側と低い金額を主張したい側が、それぞれ自分に有利な査定書を持ち寄れば、話は前に進みません。

資料を示しながら説明する様子

相手方が出してきた査定書の金額に納得できない場合、まずその資料の内容を検証するところから始められます。反論すべき点があるかどうかを、不動産鑑定士が確認します。

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では、いつ査定書で足りるのか

鑑定評価書が常に必要なわけではありません。次のような場合は、査定書で足りることが多いと考えています。

  • 不動産を売却して代金を分けることが決まっており、実際の成約価格で精算する場合
  • 双方が提示した査定額の差が小さく、間を取ることで合意できる場合
  • 不動産の価値が財産全体のなかで小さく、多少の差が結論に影響しない場合

反対に、次の場合は鑑定評価書を検討する場面です。

  • 一方が住み続け、他方に代償金を支払う(売却しない)場合
  • 提示された金額の差が数百万円あり、話し合いで埋まらない場合
  • 離婚調停・離婚訴訟に価格の資料を提出する必要がある場合
  • 別居時など、過去の時点の価格が必要な場合

よくあるご質問

査定書を複数取れば、鑑定評価書の代わりになりますか。

金額の幅を把握する目的であれば意味があります。ただし査定書が何通あっても、それぞれが仲介会社の販売見込み価格であることに変わりはありません。金額に争いがあり第三者に説明する必要がある場面では、鑑定評価書のほうが適しています。

査定を頼むと売却を勧められませんか。

仲介会社にとって査定は媒介契約を得るための営業活動でもあるため、その後の営業を受けることは一般的です。売却の予定がない段階でそれを避けたい場合は、不動産鑑定士への依頼をご検討ください。当方が売却を勧めることはありません。

鑑定評価書は誰が作っても同じ金額になりますか。

完全に同じにはなりません。採用する取引事例や補正の判断に幅があるためです。ただし不動産鑑定評価基準という共通のルールに従って手順を踏むため、根拠のない開きは生じにくく、開きが生じた場合もどこが違うのかを検証できます。

査定書を出してきた相手方に、鑑定評価書で対抗できますか。

評価の根拠を示した資料として提出できます。ただし結論を保証するものではなく、裁判所がどちらの金額を採用するかは個別の判断になります。まず相手方の査定書の内容を検証したうえで判断されることをおすすめします。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

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