不動産価格の上昇局面では、財産分与の「いつ」が金額を変える
都市部のマンション価格が動いている時期は、別居から離婚成立までの間に評価額が数百万円変わることがあります。価格変動期の財産分与で意識すべきタイミングの論点を解説します。

ここ数年、都市部のマンション価格は大きく動いてきました。財産分与の実務では、この価格変動が「いつの価格で分けるか」という論点の重みを増しています。
別居から離婚まで、価格は待ってくれない
離婚協議や調停は、長引けば1年、2年と続きます。その間も不動産市場は動き続けます。仮に年5%価格が動く市況なら、3,000万円のマンションは1年で150万円、2年で300万円動く計算です。
財産分与の実務では、分与対象となる財産の範囲は別居時を基準に確定し、その評価は分与時(離婚時)に近い時点で行う、という扱いが一般的とされています。上昇局面では別居時より離婚時の評価額が高くなり、下落局面では逆になります。どちらの時点を採るかの主張は法律上の論点であり、弁護士の領域です。
当事務所がお伝えしたいのは、その手前の実務的な事実です。どの時点を主張するにせよ、その時点の価格を示す資料がなければ主張は成り立たない、ということです。
「今の査定」しかない状態は交渉材料が半分
仲介会社の査定は原則として現在時点の価格しか出せません。手元に今の査定書しかない状態は、基準時に関する複数の主張パターンのうち、片方の材料しか持っていない状態です。
不動産鑑定評価では、価格時点を過去の特定日に設定できます。別居時点と現在時点、両方の評価を持っていれば、どちらの主張が自分に有利かを金額で比較したうえで方針を決められます(有利な方を主張できるかどうかは法律判断なので、弁護士にご相談ください)。
交渉の長期化はコストである
もうひとつ、価格変動期に意識しておきたいのは、交渉の長期化そのものが金銭的なリスクになることです。
たとえば代償金を支払って家を取得する側にとって、上昇局面での交渉長期化は、評価のやり直しのたびに代償金が膨らむことを意味します。逆に受け取る側にとって、下落局面での長期化は取り分の目減りです。「急いで不利な条件をのむ」必要はありませんが、「時間をかけること自体は無料ではない」という認識は、双方にとって合意を近づける材料になります。
評価の「賞味期限」にも注意
不動産の評価は価格時点における価格です。市況が動いている時期は、半年前の評価書が現状と乖離していることもあり得ます。調停が長引いて評価から時間が経った場合、評価の時点修正が必要になることがあります。評価を取るタイミングは、使う時期から逆算して決めるのが合理的です。
タイミングの設計も含めて、状況をうかがったうえでご提案します。
免責事項
本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。
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